飛島建設株式会社土木事業本部 坂 本 昭 夫
東京都日野市三沢地区の地下には特殊地下壕が残存している.この地下壕は,旧陸軍航空本部が立川航空工廠の施設を疎開させるために1945年2月に着工し,総延長約3,000mまで掘ったところで終戦となり未完成に終わったものである.現在,地下壕の位置が比較的正確に分かる箇所では,南北三本,東西一本分の坑道が走っている.その大きさは,幅5m,高さ3.5mである1).また,日野市に隣接する八王子市浅川地区の地下にも特殊地下壕が残存する.ここは戦時中の中島飛行機のエンジン製造工場を移転させる目的で掘られたものである.この地下壕は1945年1月に掘削が開始されて工作機械も設置されたが,エンジンを1つも完成させることのないまま終戦を迎えた2).
日野市では,宅地造成後の1972年,1996年,2002年10月に地表面が陥没するとともに家屋等に被害が発生した.また,八王子市でも1999年8月に住宅地で陥没が発生し,家屋が傾斜する事故があった.このような特殊地下壕に起因した被害は特殊地下壕対策事業の対象となる.
特殊地下壕対策事業とは,戦時中に造られた特殊地下壕のうち,危険度が高い地下壕の埋戻しや都市施設の災害復旧にともなう地下壕の埋戻しなどの防災処理を行う事業をいう3).地方公共団体が事業主体となり,国は事業費の1/2の費用を補助する.
(平成19年5月投稿)

