生活環境レベルまでの浄化に成功
竹居信幸(東邦地水株式会社地盤環境部)
ある事業所の地下タンクから灯油が約 5,000L 漏洩し、下流の農業用水路(集水埋渠)に油汚染が発生しました。この事故について、調査および対策工事を行い、生活環境レベルまでの浄化に成功したので、ここで紹介する。
汚染源については、 9箇所のボーリング調査により、地下タンクの配管であることを確認した。汚染の形態としては、図-1に示す油汚染対策ガイドラインの周辺環境での汚染と同様であった。図-2に模式断面図を示す。
対策としては、ホットスポット部(汚染源)の灯油混じり土砂の除去と土壌洗浄による浄化を実施した。浄化方法は、油膜・油臭の除去と農業用水の確保に重点を置き、下流から汲み上げた地下水を浄化能力1000m3/dayの活性炭吸着プラントにより浄化し、農業用水への放流と土壌洗浄用水として使用した。
浄化目標については、当初からベンゼン、 TPH(全石油系炭化水素; Total Petroleum Hydrocarbon)は定量下限値以下であり、ホットスポット部で、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが確認されていたが、土壌洗浄の開始直後に、すべて定量下限値以下となった。このため、浄化の数値目標を設定することはできず、農業用水路において油臭・油膜が無くなった時点で浄化完了とした。
浄化の完了確認はリバウンドの影響を避けるために、浄化プラント停止1ヶ月後に、行政当局と水利権者の立会により、油膜・油臭の無いことを確認した。
生活環境に影響を与える油臭については、分析結果が定量下限値以下でも確認されることから、数値管理ができないので、浄化完了までの時間が特定できない状況下での浄化作業となった。浄化完了に近づくともともとの地下水の臭いなのか、灯油による臭いなのか識別が困難な状況となったが、臭い自体は浄化進行とともに減少していき、3ヶ月で浄化完了することができた。
浄化時期が4月から6月と気温上昇期にあたり、浄化プラントで浄化した地下水を土壌洗浄で注入するときには、気温の影響で暖められた状態にあったことも浄化促進に寄与した。
本業務で、生活環境レベルまでの浄化は非常にコストがかかる ことがわかった。土壌環境管理は、将来的には欧米のようにリスクの評価により、リスク低減・減少のための対策工から、リスクレベルに応じた管理に移行していくものと考える。
(平成19年4月投稿)