油汚染地盤の浄化アイデアあれこれ

大同工業大学 都市環境デザイン学科 准教授 棚橋秀行

1.はじめに

棚橋秀行准教授

 多くの機械工場で用いられる機械油などの油の地盤汚染が、今後問題になるといわれている。機械工場の我が国の中小の事業所数から考えても、機械油汚染地盤の浄化需要は非常に大規模である。しかしながら、土に対する付着性・粘性が高く、揮発性に乏しい機械油を、非掘削で地盤内から除去する有効な技術は、現在までのところ確立されていない。図-1のように、揚水によって油を回収する工事がよく実施されている。確かに、初期には井戸付近の機械油がある程度回収されるが、そののち一定の距離より遠い場所の機械油を回収しようとしても地下水をくみ上げるばかりになってしまう。
 これに対し、大同工業大学・棚橋研究室では様々な非掘削での油汚染地盤のアイデアをあれこれと発案し、2000年から2008年にかけて多くの室内実験を実施してきた。ここではそれらアイデアの成功と失敗の原因と、そこから学んだ知見について報告する。

2.これまでに実験した油汚染地盤の浄化アイデアあれこれ(2000年から2008年まで)

1) 2000年のアイデア 
●超音波で土粒子に付着した油を取り除く実験
 この時点では、まだ現場全体のイメージも持たず、有効な浄化手段も発想できなかったので、当時在職中の桑山教授の超音波発振機をお借りして、「メガネ洗浄機」のようにして油汚染土を洗浄する実験をしてみた。その結果、試料の条件により大きな差があることが判明した。例えば砂などの粒径の細かい土の場合は、超音波による土の締め固め効果でむしろ油が間隙にトラップして移動しなくなることがわかった。また、地盤内では超音波の効果が数メートル先までも届かないことも判明し、超音波の実験は2000年度で中止した。
2) 2001年のアイデア 
●揚水による動水勾配のある地下水に、家庭用洗剤を加え、油を井戸へ流す実験
 この時点では、着色したサラダ油を模擬機械油として実験を行った。サラダ油と混合した砂をビーカーにいれ、家庭用の洗剤で攪拌して洗ったところ簡単にきれいになった。そこでいささか無謀ではあったが、3次元大型土槽で数トンの汚染土を使って数日間上記の実験を行った。結果は失敗で回収井戸に油膜すら導かれてこなかった。ビーカーのように油汚染土と界面活性剤を攪拌混合することができないことが、地中では想像以上に大きなハンデになること、比表面積の大きな土粒子に付着した油は界面活性剤の水溶液に接触するだけでは浄化されないことを思い知らされた。この大失敗こそが、棚橋研究室の現在に至るまで浄化法開発の原点となった。

図-2002-1 3次元大型土槽内の概要
写真2003-1 空気の圧入により浮上した油

3) 2002年のアイデア
●汚染地盤を剥離性の界面活性剤づけにし、下からの圧入空気の流れで油を浮かせる実験
 サラダ油で汚染した土を剥離性の界面活性剤づけにし、下からの圧入空気の流れで攪拌を行いつつ地表面上の液面まで油を浮かせる実験を行った。実験の過程を図2002-1に、油が浮上した状況を写真2002-1に示した。ただ空気の通りにくい部分に浄化ムラができること、現場で地表に油を浮かせることの可否などが問題として残った。