資料調査

特定資料

 空洞調査に最も役立つ資料は、空洞を掘った時の記録です。例えば亜炭なら、所管の経済産業局で管理していた炭鉱の鉱区図や、防空壕なら自治体で調査をした時の記録などです。ただ地上の個人財産に影響する記録は、閲覧・入手できない場合もありますのでご承知下さい。既存資料を亜炭空洞調査の予察に有効に活用した例としては、次の文献をご覧下さい。(稲崎, 2004; 「充てん」第45号)

一般資料

 誰でも入手あるいは閲覧出来るのは、国土地理院発行の地形図、各自治体の都市計画図、産業技術総合研究所ー地質調査総合センター発行の地質図と説明書などです。国土地理院では航空写真の閲覧サービスも受けられます。炭田地帯の地質と炭質については、日本地質鉱産誌Ⅴ-aによくまとめられています。また三大都市圏をはじめ多くの都市圏では、詳細な調査データを編集した地盤図が刊行されています(例:名古屋地盤図など)。これらの資料も、空洞分布の背景を知る上で大変役に立ちます。航空写真や昔の地形図は、陥没跡や採掘地点の特定に使えることがあります。

対策工事を計画するための調査の流れ

聞取り調査

地下壕の場合

 大部分の地下壕は太平洋戦争中に掘削されました。また坑口の位置はアクセスの便利な所が大部分です。従って当時のことを知っておられる方も少なくありません。
聞取りにより、壕の坑口、地下壕の掘進方向や大きさ・掘進距離など、詳細な情報を得ることは十分可能ですし、それによって効果的な調査を進めることが出来ます。

亜炭空洞の場合

 石炭と違って、亜炭の大部分は太平洋戦争後に採掘されました。ですから当時のことをご存知の方は少なくない筈です。ただ多くの亜炭採掘跡で都市化が進んでいるため、聞取り調査が進め難い所も多くなっています。聞取りの重点は次の各項目です。
炭鉱名; 坑口(立坑や斜坑)の位置、掘進方向、掘進距離など;活発な出鉱が見られた坑口と時期; 坑内での採掘状況; 従業員数。

調査範囲の設定

 地下空洞の調査では、調査区域が予め決められているのが普通です。しかし資料調査や聞取り調査の結果で、指定区域外まで空洞が広がっている可能性があると判断された場合は、地表踏査だけでも対象範囲を拡げて実施することです。指定区域外の調査データが、空洞調査の有力な手がかりとなった例は少なくありません。

 上に示したフロー図からお分かりのように、ここまでは事前調査の中の予備調査の段階に過ぎません。効率的な空洞調査を行うためには、地表踏査と予察のためのボーリングなどが欠かせません。