1.調査内容

 この章では、前章までに述べた空洞調査の結果をどのように解析し、さらに空洞充填工事の概略設計に必要な諸要素をどのようにして決めて行くかという手順についての解説を試みました。説明に使用した図は、名古屋東部丘陵に分布する新第三紀東海層群中の亜炭採掘跡の調査を仮定して作成した模式図です。調査内容は通常の手順にしたがったものですが、あくまで想定されたものに過ぎないことをご承知下さい。亜炭の場合は採掘当時の状況が不明の場合が多く、坑内図を入手することが出来ても必ずしも正確ではないので、このような慎重な調査が必要になります。なお地下壕の場合は掘削当時の資料が入手できる場合が多く、前章で述べたようなボーリング計画を実施すれば良い結果が得られると思われます。
 図-1は土地造成工事に伴って行われた空洞調査の経過を示したものです。最初に、聞き取り調査によって推定された立坑の位置(△印で示す)や、当時亜炭採掘が行われたとされる箇所をカバーするように、調査区域を設定します。ここで概略の地質状況を知るための地表踏査や予察ボーリングを実施しました。予察ボーリングは空洞の有無よりも地質を調べるのが目的ですから、貫入試験は行わず全コアを採取することが必要です。また区域全体を代表するような地点を選び、少なくも30m以上の深度まで掘るのが普通です。なお図-1に示す3本の予察ボーリングのうちNo.2で空洞が捕捉されました。(図-2)

 次にA,B,CおよびDの4本の測線を設定し、電気探査(比抵抗探査)を実施しました。図-1に示すように、A,B,Cの3本は50~75m間隔でほぼ平行に、Dはそれにだいたい直交するように設定することで、区域全体をできるだけカバーするようになっています。この地区の地下水面の深度は丘の上では5~7mでしたから、地下水面より上の空洞は高い比抵抗値を示す筈です。探査の結果何らかの比抵抗異常が検知された所でボーリング調査を実施しました。B-1からB-18まで18本のうち、空洞を捕捉したのは8本でした。予察調査のボーリング3本を加えると、ボーリングによって空洞を捕捉した比率は約43%で、これは亜炭空洞の調査では比較的高い方だと言えるでしょう。通常は、30%前後の場合が多いようです。