地形地質踏査(1/5,000以上の大縮尺の地形図を使用)

1.前頁で述べた資料調査や聞取り調査の結果を現地で確認し、図上に記録します。
2.地下壕の場合は、地表踏査により坑口の位置・標高・崩壊状況・などを確認し、出来れば坑内の状況を記録します。また坑口が塞がっている場合は、パイプを打ち込むなどして掘進方向を確かめておくと、後の調査に大変役にたちます。
3.地下壕は斜面や崖下に坑口が開かれている場合が多いので、地形図の活用はきわめて重要です。地形と関連させて、おおよその地質を知ることも可能です。
4.亜炭空洞の場合は、1層あるいは2層以上の亜炭が採掘されているので、夾亜炭層の層序(地層の重なり方)を把握し、採掘の対象となっている亜炭層の層準を明らかにすることが重要な課題になります。亜炭田には大小の断層が分布しているので、地質構造の調査も欠かせません。
 しかし実際には、地表踏査だけでこれらの問題を解明することはかなり難しいし、時間もかかります。亜炭空洞の調査の場合は、聞取り調査などの結果から空洞の分布範囲を想定し、予察を目的としたボーリング(オールコアボーリング)を2~3箇所で実施し、夾亜炭層の層序について一応の見通しを得るのが効率的です。調査範囲が狭ければ予察ボーリングの必要はありません。
 次に予察ボーリングの結果を模式的に示し、これから何が読みとれるか考察してみました。ボーリングの間隔は300~500mと仮定します。

予察ボーリングによる夾亜炭層対比模式図
(尾張炭田の実例を参照して作成)

 この模式図は、亜炭空洞の調査報告を参照して作成したものです。3箇所で行われた仮定の予察ボーリングの結果から、夾亜炭層の特徴として次のような点をあげることができます。


1.主要な亜炭層は粘性土と密接に伴って賦存する。亜炭層の一部は炭質粘性土に移化する。
2.砂層は幾つかの層準にまとまって分布するが、水平方向に厚さの変化が著しい。No.3では、砂層の下部に砂礫層を伴う。
3.No.2とNo.3に火山灰層が挟在する。組成から見て、両者は同一の火山灰と考えられる。火山灰の直下には亜炭層があり、上には砂礫または砂層が分布している。
4.No.2とNo.3は火山灰層によって対比出来る。No.1には火山灰が認められず、図に示した対比が可能かどうかは、今後のボーリング調査によって判断せねばならない。なおNo.1とNo.2の間、No.2とNo.3の間には断層が存在する可能性がある。
5.比較的良質の亜炭層は、火山灰層の下の3枚である。この3枚の亜炭層が採掘の対象であった可能性が高い。

 予察で言えることはこの程度ですが、次の空洞探査の段階で大変参考になることは間違いありません。