事前調査と充填施工のつながり
左に掲げた充填施工のフロー図をご覧下さい。
1990年代までは、事前調査が終わればすぐ充填施工に移行出来ると考えて、工事の設計が行われていました。しかし実際には、限られた予算で行う事前調査で、空洞の分布状況を正確に把握することは至難のわざです。そのため、設計内容と充填施工結果が大きく食い違うこともしばしばありました。「改訂版 空洞充填施工マニュアル, 2004」では、このギャップを埋めるために、施工前調査の重要性を特に強調してあります。
施工前調査の中心は、充填孔や観測孔の掘削を含めた空洞確認のためのボーリングと、水の注入による水位変化から推定する空洞の連絡状況の調査です。連続性調査の概要を下の模式図に示しました。ある範囲の空洞が連続していることが分かれば、それぞれのブロックの充填施工計画も作成できます。なお限定充填工法の場合は、端部材を注入する範囲を確定するために、確認ボーリングの密度も高くなり、最低8m前後の間隔でボーリングを実施する場合が多いようです。つまり、施工前調査は充填施工の工程と密接に絡み合った調査です。そしてその結果を事前調査結果にプラスすることで、空洞の層準と連絡状況、さらに空洞率についてより正確な情報を得て、合理的な施工計画を策定することが出来ます。
もう一つ注目されるのは、音響測深探査装置を使って水没した坑道の坑内の状況や連続方向を直接観察する手法の開発です。その模式図を下に示しました。
注水による調査
充填工事で必ず実施されているのは、空洞を捕捉した幾つかのボーリング孔を使って、その一つから水を注入し、他のボーリング孔で地下水位の変動を観測する方法です。左の図に示すように、地下水位の上昇が観測された範囲は、空洞相互間が連絡していることが明かです。この範囲は一つのブロックとして充填施工をすることになります。なお充填スラリーを注入するのは、最も空洞の標高が高いボーリング孔からで、ほかの孔では充填状況の観測をします。
音響測深探査による観察
左の図に示すように、ボーリング孔にゾンデを挿入し、ゾンデの先端を自動回転させ、方位と距離を測定したデータをパソコンに取り込み空洞形状を記録します。水平計測だけでなく、鉛直計測も可能です。
この装置で、水没した亜炭空洞内の形状・坑道の掘進方向を観測し、次の削孔位置の選定・空洞率の補正などのためのデータを提供します。また限定充填工事での端部材の充填状況の確認に、重要な役割を果たします。
充填材の配合比
主原料は砂キラと粘土キラです。これに固化剤と水を加えて充填スラリーとしり、充填孔から空洞へ注入して充填をします。原料の配合例を次に示します。原料自体に組成の違いがありますから、配合比率は混合物の性状試験によって決められることは言うまでもありません。
粘土キラ | 砂キラ | セメント系固化材 | 水 | |
配合量 | 400 | 200 | 50 | 759 |
充填スラリー製造プラント
左の写真は中規模充填のための充填プラントです。中央が充填材混合槽、右は固化剤用サイロで、所定の割合で粘土キラと砂キラに水を加えて混合し、固化剤のミルクを加えて充填孔へ圧送します。
充填スラリーの品質基準
充填スラリーは、1日に2回、次の各項目について試験を行って品質管理をしています。
品質項目 | 目標値 | 備考 |
フロー値 | 9~14秒 | Pロート使用 |
ブリーディング率 (固化前に分離する水分) | 3%以下 | |
一軸圧縮強度 | 50kN/㎡以上 | |
水中養生 | 28日 | 20kN/㎡以上 充填物の不攪 |
乱試料有害物質試験 | 定量基準以下 |
充填施工管理
これは充填施工管理のシステムを示した模式図です。プラントと現場までの距離が大きいため、製造されたキラスラリーは圧送管やミキサーカーで充填現場まで運ばれ、ここで固化剤などの添加材を加えて充填孔から注入されます。また工事に伴い空洞水や洗浄水から生ずる汚水をバキュームカーで回収して濁水処理も行ってます。環境管理は施工工程の重要な一部です。(改訂版 空洞充填施工マニュアルより)