一般に、土壌汚染の対策費用が土地価格の3割を超えると、土地売買が不調になると言われている。図-3に示すとおり、当社の最近の物件について分析したところ、やはり対策工事が実現した物件は、ほぼ全件、土地価格の3割以下で行われている。逆に、解決しなかった、あるいは現時点で解決していない事例については、土地価格の3割程度、またはそれ以上かかると試算された事例であった。

 ブラウンフィールド問題は、低・未利用地の発生、再開発への支障、不動産価値の低下など、単に個々の土地における問題となるだけではなく、地域活力の低下、地域コミュニティの衰退など、社会経済的な問題に発展すると考えられている。

2.当社の取り組み

図-3 対策費が土地価格に占める割合
★印が当社のブラウンフィールド

(1)トータルソリューション
例えば、先述したように土壌汚染の対策費用が高いと、ブラウンフィールドとなり、土地が塩漬けとなる。あるいは掘削除去などの対策工事を行った後、建築工事でその場所を再度掘削する場合、大きな無駄を生じる。このような問題に対処するため、当社では、土壌汚染について単に対策工事の提案だけではなく、土地の調査の段階から、建築工事や将来的な土地の利活用をふまえた総合的な解決に取り組んでいる。最近の事例について、3件紹介する。
 一つめは、ある都市開発地域の一区画で土壌汚染が判明した事例である。対策方法を検討した結果、掘削除去ではコストが膨大となり事業収支が合わない。当地区で計画されていた事業の中止や遅延などによる、周辺地区全体の経済効果への波及が心配された。





図-4 遮水壁による封じ込めの模式図
(最初の事例)

 そこで、ここが商業施設として利用されることを前提に、図-4のように汚染範囲を地中壁で取り囲み、雨水の浸透や地下水の移動がないよう上部を店舗建築物や駐車場の舗装で覆った。これにより、コストを大幅に縮小し、汚染のない土地と同等に使用できるようにした。なお、鉛直遮水壁は、鋼矢板やソイルセメントによる連続地中壁が一般的であるが、当現場ではエコクレイウォール工法と呼ばれる、新しい工法による試みを行った。エコクレイウォールは連続地中壁であるが、セメントの代わりに高性能なベントナイトを混合し、柔軟かつ透水性の低い壁を造成する。
 エコクレイウォール工法は、図-5のような、TRD工法と呼ばれる従来の連続地中壁工法を応用して行うものである。等厚壁施工機の撹拌機を地中に挿入し、改良材と現地の土を混合撹拌しながら横移動することで、シームレスな壁体を造成する。図-6の写真は、壁の断面を撮影したものである。
 主な特徴として、天然粘土鉱物による地中壁であるので、地盤環境に優しく、遮水性能と耐久性が高く、変形追随性もあるため耐震性能にも優れ、さらに経済性にも優れる。

図-5 エコクレイウオール製造機(TRD)
図-6 エコクレイウオール完成後の写真