(2)愛知土壌・地下水汚染対策研究会
当研究会は、平成15年に発足し、当地域における土壌汚染問題について、いろいろな側面から技術的な蓄積を図り、地域社会に還元できるよう活動を行っている。研究会は、大東憲二氏(大同工業大学 教授)が会長を務め、当社が事務局を務めている。調査会社、コンサル、メーカー、不動産関係などのあらゆる業界から21社が集まり、さらにオブザーバとして参加している愛知県、名古屋市などの行政機関とも情報交換を重ねている。主な活動内容は、当地区の自然由来汚染に関する問題、外部への情報発信活動(啓蒙活動)、法条例に関する情報収集、リスクコミュニケーション、有害物質に関する知識向上など、テーマごとに分かれワーキンググループ活動を定期的に行っている。また、毎年1回、有識者を招いた一般事業者向けのセミナーや、会員向けに大学の先生や民間の専門家などを招き、勉強会などを行っている。
当研究会のワーキンググループ活動の中で報告された内容を紹介する。これは、第62回土木学会(平成19年)において「土壌・地下水汚染サイト周辺における住民の意識調査」と題して投稿したものである。
名古屋市内で、土壌汚染が報告された現場付近の住民に簡単なヒアリング調査を行い、その結果をまとめた。そこで共通して言えるのは、住民は、住民説明会等で土壌汚染の存在について知らされることが多いのだが、皆汚染の程度や対策方法についてはあまり理解していないということであった。その結果、ただ漠然とした不安や不満だけが残り、時に感情的な議論に発展してしまうのではないかと思われる。結論として、汚染があったという事実だけが伝えられ、そのことだけが意識に残るような伝わり方をしていることが多い、としている。よく、基準値の何倍、という表現がされるが、実際には基準値やリスクについて正しく理解されておらず、安心してよいのかどうかを判断する基準についても、あまり伝えられていない。また、工事が終了したのかどうかということも伝えられていないことが多く、まだやっているのか、もう終わっているのかよく分からない、といった意見もあった。そういった情報が発信されていないのが実情であり、不安が放置されたままになっていることが多いようである。リスクコミュニケーションの重要性を認識させる報告であった。
3.おわりに
土壌汚染の対策技術は多種多様であるが、コストが安く、オールマイティな工法は未だ皆無と言ってよい。これは、土壌汚染が汚染物質、地質、地下水などさまざまな要素に依存しているため、やむを得ないことである。
そのような中、当社においては前章で述べたように、各土地の利用方法に応じた、総合的な解決方法の提案、あるいは地域への貢献活動を通じて、当問題に真摯に取り組んでいく所存である。