4) 2003年のアイデア
●酢と重曹の地中での発泡作用により、乳化性の界面活性剤と油の混合を促進する実験
「浄化ムラを作らない」「油を地上に出さない」方法として、界面活性化剤と重曹の混合液を汚染試料を包むようにしみ込ませ、これに酢を注入して重曹との反応による発泡を地中で起こすことによる攪拌と、水すすぎによるウェルポイント回収を発案した。写真2003-1が発泡の様子である。しかし実験規模が大きくなると、図2003-1のように反応の終了した発泡反応帯がその後の反応を阻害し、全面的な攪乱に至らないことが判明し、この方法は断念した。なお2003年からサラダ油に代えてエンジン油の使用を開始している。
5) 2004年のアイデア
●界面活性剤をはじめからクリーミーな泡として用い、浄化力を向上させつつ使用量を減量する実験。前年に行った全面発泡攪拌を、はじめからクリーミーな泡状にした界面活性剤を浸透せることで汚染除去ができないかと考えた。最初は白砂利(粒径3.0~5.0mm)をエンジンオイルで汚染した試料を用い、泡を注入する、あるいはかけ流すだけで浄化してしまうことに成功した(写真2004-1, 2004-2)。しかし汚染地盤の土の粒径がさらに小さくなると、泡が間隙中に入ってゆく際にすぐに液化してしまい、まったく効果がないことが判明した。その他、マイクロバブル水や、コロイド洗剤を使用する実験を行ったが効果はなかった。
●これまでにない薄さに希釈した界面活性剤に炭酸水素ナトリウム(重曹)を加えた浄化実験。
これまでの界面活性剤と油の攪拌混合を行う発想をやめ、ゆっくりと漬け置く実験を行った。写真2004-3は、濃度5%まで希釈した乳化性の界面活性剤に炭酸水素ナトリウム(重曹)を加えた水溶液を、粒径0.1-0.4mmのエンジンオイルで汚染されたガラスビーズの下から3日間かけてゆっくりと漬け置き浸透させた結果である。これまでの実験では濃度5%まで希釈すると乳化がほとんど起きなかったが、重曹を添加するとこれがアシストされることが見出された。この液体を用いて3次元大型土槽実験を行った結果、望ましい浄化が実現できた。これにより、界面活性剤をもちいた非掘削浄化のめどを立てることができた。