4.ケニヤに出現した「土のう」積み道路

写真3 ケニヤ・マサイマラ国立保護区の、超軟弱土壌地帯における「土のう」積み道路の建設状況。
「土のう」の上に敷いているのは現地生路盤材で、
動物が道路を横断できるように配慮されている。
写真4 4ヶ月にわたる豪雨と大洪水のの後も、無傷で残っていた道路

 上の写真は、サファリで有名なアフリカ・ケニヤの国立自然保護区で試 験的に建設された「土のう」積み道路である。工事の対象になったのは、 Black Cotton Soil(註参照)と呼ばれる超軟弱地盤が広がる地域で、この土壌は吸水能が大きく膨潤性に富む。水を含んだものは塑性がないために車両などもずぶずぶ車がはまりこんで動けなくなるという難物である。この軟弱地盤上に雨期(全体が冠水し水深は30cmに達する)でも使用できる道路を建設するための協力を求められ、2006年10月に着工した。「土のう」4段積み、幅3mの道路100mが完成したところで雨期に入り、工事は4ヶ月中断された。写真3は建設途中の、写真4は雨期が終わった後の状況である。
 「土のう」積み道路の上には、「マラム」という現地生路盤材(粘りのある砂)敷いて動物が道路を越えられるようにしてある。そして雨期が終わった後、この「マラム」がそのまま残っていたことで、「土のう」積み補強工法の威力がまざまざと示されたわけである。マサイマラ保護区では、2,008年3月までに、この工法で延長約2kmの道路を建設する予定とのことである。
(註) Black Cotton Soilとは?
 地質学的にはRegurと呼び慣わされている。インドのデカン 高原のような玄武岩台地上に分布する。暗灰色でCaを多く含み、 SiO2に乏しいスメクタイト(モンモリロナイト鉱物の包括的名 称)からなる。(Glossary of Geologyによる).

5.おわりに

 ここでご紹介したのは当日のご講演の一端に過ぎない。「土のう」による振動の減衰効果、砕石入り「土のう」の凍上防止効果など、紙数の都合で省略させて頂いたが、詳細については松岡先生のご著書「地盤工学の新しいアプローチー構成式・試験法・補強法」.京都大学出版会(TEL 075-761-6182),2003、pp.227-311を是非お読み頂きたい。
 貴重なお話を頂いた先生に改めてお礼を申し上げる次第である。


                                (文責:藤井)