陥没しやすい空洞の条件 ー 特に土木工事との関係について ー 

充填技術センター常任理事  藤 井 紀 之

1.概要

陥没しやすい空洞の掘削時の状態としては次の点が注目される。 
 (1) 地表からの深度が20m以下である。
 (2) 土被り層の強度が小さい。強い支持層があっても厚さが薄い。
 (3) 空洞の幅がひろく、空洞率が大きい。
 しかし上記の条件に合致していても、空洞は必ず陥没するとは言えない。ある程度時間が経過し、天盤や坑壁の劣化が進んだ部分が崩壊し、陥没が発生する。深度が大きい場合は、空洞が崩潰すると地表沈下を引き起こすが、陥没に至らない場合が大部分である。空洞の劣化を促進し陥没を発生させる重要な要素として、次の3点があげられる。
 ① 地下水面が空洞より下位にある。
 ② 掘削後20年以上経過すると、陥没が発生する頻度が大きくなる。
 ③ 土木工事によって生ずる地盤のゆるみなどが空洞の劣化をもたらす。

2.地表水が空洞に浸透する速度と地下水位の関係

空洞の天盤や坑壁の劣化をもたらす重要な要素の一つは水である。地下の空洞の場合は、地表からの浸透水の影響が最も大きい。浸透水は、鉱物の粒子間間隙、亀裂、地層の層理面、断層破砕帯など、さまざまな空隙を通じて地表から下方へ移動する。その速度は地盤の透水係数や空隙の有無によって変わるが、空洞の存在も浸透速度を支配する重要な要素である。そして地下水面の水準によって空洞へ浸透する水の速度は著しく異なっている。その違いを図-1に模式的に示す。

図-1 地下水面と浸透水の動きの関係を示す模式図

 図-1は、地下水面より上にある空洞(左)と、地下水によって水没している空洞(右)に、地表水が浸透する状況を示す。矢印の点線が水の浸透する状況を想定したもので、実線は浸透速度が速い場合である。左の図の場合、空洞に入れば浸透水は自由水になるので、空洞に近くなると水の浸透速度は急激に早くなると考えられる。一方右の水没空洞の場合は、浸透水は地下水面まで達すると地下水に合流してしまう。地下水の動き方は条件によって異なるが、自由水と違ってきわめて緩慢な場合が多いことは言うまでもない。したがって水の無い空洞の天盤付近には浸透水の水みちが出来やすい。そして年月の経過とともに水みちのまわりの地盤が削られ、空洞の天盤や坑壁表面の剥離がすすみ、劣化をもたらすと考えられる。常温で、pH7前後の地下水が地盤に化学変化をもたらすには長い地質学的時間が必要であり、劣化をもたらす主要な要因は物理的な浸食である可能性が大きい。