写真‐7 岐阜県御嵩町で発生した陥没
(1982年)

 地下空洞の充填では、充填材料としてリサイクル材を活用することが研究されており、空洞充填工法は地盤災害の防止のためだけではなく、産業副産物の再利用による環境面や省エネルギー面でも有効な方法として、今後とも研究開発が望まれる分野であると考える。
 亜炭空洞の存在によって生じるであろう地表沈下や浅所陥没(写真‐7,8)に対する危険度の評価は、空洞掘削による周辺岩盤の応力変形状態に及ぼす影響因子や、地表面の構造物(例えば、住居建物、公共構造物、道路、ライフラインなど)の重要性などとの関連で考えられねばならない。
 中部地方の亜炭採掘現場においては、地域的な浅所陥没に対する危険度評価として、わずかに岐阜県御嵩町地区における地震時の亜炭鉱廃坑に対する安全性の調査が行われているだけである。予想される東海地震に対する亜炭鉱廃坑の安全性調査を行っている。

写真‐8 陥没による家屋の被害
(長久手町,2002年)

予備段階の調査として、ボーリング及び地形・地質資料、浅所陥没位置・空洞位置図などの既存資料の収集・分析および地理情報システム(GIS)を用いたデーターベース化による空洞の有無と深さの推定が、また、空洞の有無及び深さの探査法として常時微動観測、音響透水トモグラフィー及び微重力探査法の精度の検証が行わ れている。さらに、東海地震や東南海地震の震源モデルを設定して深度と空洞の安定性(亜炭空洞残柱の安全性)に関する検討が行われ、重要構造物・施設、ライフラインのデーターベース化や、それらの被害推定と危険度のランク分けおよび対策順位の決定を行おうとしている。
 負の遺産として残されている既設空洞に対して、陥没を起こした後の調査や解析による検討は比較的容易であるが、現在その影響が見られない状態の空洞の陥没に対する危険度を評価することは極めて困難である。その大きな原因の一つが地下空洞調査の可能性および信頼性の問題であり、もう一つは空洞周辺地山の風化変質の問題 である。したがって、陥没に対する危険度評価にはなお多くの地質工学的および地盤工学的な課題が残されている。
 昨年より、岩の力学国際会議(ISRM)では鉱山の閉鎖に伴って生じる諸問題を解決するためにPost Mining Committeeと言う委員会が設置され、閉山後の空洞の安定性や地下水・湧水および地盤の汚染の処理など地盤環境の保全に関する対策にについて情報交換が行われてきている。この分野においても地盤岩盤や地質工学が大いに 活躍できる可能性があるように考える。