1.キラ充填工法の概要

 「キラ充填工法」はキラのようにアルミナ分に富み粒度管理が十分に行われている材料を使用し、水和反応による固化作用が効果的に活用できる空洞充填工法です。一般に現地に設置した充填プラントで材料を練り混ぜて充填材を製造し、配管を通して現場まで送り、充填孔から空洞内に注入します。本工法は亜炭廃坑による陥没・沈下の被害防止を目的に、昭和49年(1974年)に東海地方の亜炭産業を管轄する通商産業省名古屋通商産業局(現、経済産業省中部経済産業局)に設けられた「古洞関連総合施策委員会」において検討され、開発されました。

 ここに、「キラ」とは愛知県瀬戸市周辺や岐阜県東濃地方で産出する珪砂や陶土の選別工程で大量に排出される粘土混じり微砂の俗称です。キラには白雲母(キララ)の細片が混じっていることから、このように呼ばれるようになりました。キラを充填材の材料(母材)に用いる場合、もう一つの母材である粘土キラとの関係から、これを「砂キラ」と呼んでいます。

 委員会終了後の昭和52年(1977年)、名古屋通商産業局の主導により、これらの成果を引き継ぐ団体として「日本充てん協会」が設立されました。現在、「一般社団法人充填技術協会」がその事業を継承し、より合理的で確実な工法への改良および開発とその普及を目指した活動を展開しています。

 キラ充填工法には対象とする空洞を広く充填するか、または空洞の限定された範囲のみを効果的に充填するかによって、2つの方法が使い分けられています。前者は上記の名古屋通商産業局の委員会で開発された工法で、「流動性充填工法」と呼びます。後者は後年になって開発された工法で、「限定充填工法」と「二層端部限定充填工法」があります。

2.材料

 キラ充填工法の充填材は粘土キラと砂キラを母材とし、これに固化材と水を練り混ぜて製造します。「粘土キラ」とは砂利工場などで山砂利を骨材原料として選別する際に分離・濃集される粘性土のことで、充填材の材料に用いるときの呼び名です。一方、砂キラについては、近年、本来の珪砂選別残渣に替えて砕石工場で砕石を選別する際に生じる脱水粘土や石粉などを用いることが多くなっています。図1~図4に充填材に用いる材料の例を示します。

 このうち、水ガラスは限定充填工法や二層端部限定充填工法において、水ガラスと固化材中のセメント成分とのゲル化反応を利用し、充填材の流動性を制御するために添加する材料です。酸化ナトリウムと無水珪酸の混合液で珪酸ソーダとも呼ばれます。一般には、軟弱地盤の改良、接着剤、耐火塗料などに使用されています。

 母材の土質試験結果の例を表1および図5に示します。

図1 粘土キラ(砂利工場排出)    図2 砂キラ(砕石工場排出)

図3 固化材            図4 水ガラス

表1 母材の土質試験結果の例

図5 母材の粒度分布の例

3.施工方法

 キラ充填工法では仮設ヤードに専用の充填プラントを設置し、材料を連続的に練り混ぜて充填材を製造します。製造した充填材はプラントの充填ポンプにより配管を通して現場まで圧送し、充填孔から空洞内に注入します(図6)。現場の近くにプラントを設置するスペースがない場合は、近郊にプラントを設置します。そこからアジテータ(ミキサー車)で充填材を運搬し、現場に置いた充填ポンプを使って充填孔から注入します。

 充填孔を設置するための削孔(ボーリング)機械の例として、図7に全油圧式アンカードリル(クローラタイプ)を、図8にロータリー式マシンを示します。

 充填工事は準備工、充填孔設置工、充填工、充填材製造(プラント設置、運転)、施工管理、品質管理、環境管理、出来形管理等からなります。図9に主要工種のフローを示します。

図6 充填プラントと充填材の流れ

図7 全油圧式アンカードリル(クローラタイプ)

図8 ロータリー式ボーリングマシン

図9 充填工事主要工種のフロー

4.特徴

 流動性充填工法、限定充填工法、二層端部限定充填工法を総合したキラ充填工法としての共通の特徴には次のようなものがあります。

 ① ブリーディングが少ないため、空洞天盤との間に隙間がほとんど発生しません。

 ② 水中における充填性に優れています。

 ③ 副産物の粘土キラ、砂キラを利用するため、材料費が安価で、環境負荷低減にも有効です。

5.実績

 図10に流動性充填工法、限定充填工法、二層端部限定充填工法の工法別に、キラ充填工法の施工実績を示します。グラフの横軸の年度は、工事の契約年度を表しています。

 図から分かるように、空洞充填事業の草創期ともいえる1975年度~1998年度はすべて流動性充填工法による施工でした。その後、限定充填工法が登場した1999年度以降は、多くの工事が同工法により施工されています。これは、限定充填工法の特徴である充填材の流出防止の性能が発注者のニーズに適っていたためと考えられます。さらに2018年度以降は、限定充填工法がその改良技術である二層端部限定充填工法に置き換わり施工されています。

 2026年7月時点でのキラ充填工法の施工実績は工事数で94件、総充填量で約121万m3に達しています。

図10 キラ充填工法の施工実績