飛島建設株式会社  和田幸二郎
執筆:2020年6月

1.はじめに

 岐阜県御嵩町比衣地区から可児市柿田地区には、昭和10年代から30年代にかけて盛んに採掘された亜炭の採掘跡が空洞として多く残されており、たびたび陥没などの災害をもたらしている。この地域を通る東海環状自動車道と可児御嵩バイパスの建設において、亜炭空洞の対策として充填工法による埋戻しが最適な方法に挙げられた。しかし当地区のような残柱式で採掘された空洞率の高い空洞の場合、従来の充填工法では充填材の流動性が高いため域外へ流出し不経済である。そのため、充填には路線下の対象範囲の空洞から外側への充填材の流出を防止する技術が必要とされ、これに対応できる具体的な工法として「限定充填工法」が採用された。本工事は限定充填工法を実工事に適用した最初の充填工事である。図1に限定充填工法の概念図を、図2に全体平面図を、図3および図4にそれぞれ土工部横断図と橋梁部横断図を、図5に充填施工手順を示す。

図1 限定充填工法概念図

図2 全体平面図

図3 土工部横断図

図4 橋梁部横断図

図5 充填施工手順

2.工事概要

 工事名:平成12年度東海環状可児亜炭坑充填工事
 工事場所:岐阜県可児郡御嵩町顔戸~可児市柿田
 発注者:国土交通省 中部地方整備局 多治見砂防国道事務所
 施工者:飛島建設株式会社
 工 期:平成13年3月16日~平成14年10月31日
 施工内容:総充填量:81,147m3
      削孔工総延長:54,145m

3.空洞状況

 充填範囲は東西方向に2km、南北方向に1.5kmで、空洞深度8~90m、空洞高2.8m以下の残柱式の亜炭採掘坑を充填するが、東海環状自動車道の建設位置では上下2層に採掘されていた。土質は上部6m程度の砂礫と下部の軟岩とから成っていた

4.充填計画

 限定充填工法は、従来の流動性充填工法のキラ材・特殊固化材に特殊水ガラスを加えることにより充填材をゲル化させ、流動性を制御する。外周部には流動性を抑え、中詰部には流動性の比較的高い2種類の充填材を用いている。表1に品質管理値を、表2に充填材の配合を示す。
 限定充填工法で用いる充填材の特徴を以下に挙げる。
①水ガラスのゲル化作用により流動性を抑制し、対象範囲外への充填材流出の防止が図れる。
②東海地方で産出する陶土の副産物であるキラ材をリサイクル利用するため、環境負荷の軽減とコストの低減が可能である。
③瞬時のゲル化作用により充填材の水中不分離性が向上し、地下水の水質保全が可能である。
④特殊固化材と特殊水ガラスの使用により、所要の強度と長期耐久性を確保できる。
⑤ゲル化後においては塑性流動性を保持し、空洞天端への密着充填が可能な充填性を有す。
⑥配合を調整することにより、ゲル化後の流動性を容易に調整できる。
⑦大型充填プラント・配管輸送による大量かつ連続した充填により、工期短縮が可能である。
 これらの特徴を利用して、当工事では、充填範囲外への流出防止対策のために外周部に流動性の低い充填材(端部用充填材)を用いて外周部閉塞を行い、その後、外周部閉塞された空洞内に流動性の高い充填材(中詰用充填材)を充填し完了とした。
 図6に充填材輸送方式フローを、図7に充填工施工フローを示す。音響測深探査では、空洞・残柱の状況を詳細に把握する。この調査結果は、充填量の推定・充填順序を決定するための有用な資料となる。探査結果を考慮し、端部(外周)用と中詰用の充填計画を行う。充填時には、充填材の到達状況を測定する充填高探査を行う。充填高探査は充填感知センサーを数段取り付けた計測器を充填周囲の孔に設置し、充填材の到達を電圧変化により感知することで、充填材の広がりを確認する。端部充填終了後の出来形は、音響測深探査による充填形状の測定を行った。充填の打ち止め管理は、充填高探査による材料の到達管理、および計画充填量や端部用充填材の形状を考慮した充填量より設定した充填管理値による量判定によった。
 充填材輸送方式は、中継方式・搬送方式の2方式で行った。充填プラントからは約300mの範囲に充填配管による中継方式にて充填した。充填孔までの距離が中継方式で充填できる範囲を超える場合、または計画充填量が少なく配管による直接充填が有効でないか、あるいは配管をすることが著しく困難な場合などは、トラックミキサーでの搬送方式とした。

表1 品質管理値

表2 充填材の配合

図6 充填材輸送方式フロー

図7 充填工施工フロー

5.おわりに

 限定充填工法を初めて本工事で施工して確認できたことおよび得られた知見を以下に列記する。
①計画充填量に対する実充填量は、91%(83,460m3/92,034m3)となり、精度の高い充填管理がなされたといえる。
②充填確認の結果、平成11年度の試験施工から本施工まで全56箇所において空洞天端の充填密着を確認した。充填性は100%であった。
③本工法は、浅所部と50m以深の大深度部の区別なく、空洞天端までの確実な充填が可能であり、外周用による端部閉塞と、その内側の中詰用配合による合理的な充填工事が可能であることが立証できた。
④硬化後の一軸圧縮強さは、室内養生サンプル・原位置コアともに各配合すべてのデータにおいて設計基準強度を上回り、また、試験施工データを基に設定した配合強度(橋梁部580kN/m2、土工部145kN/m2)に対しても上回り、要求品質を満足する結果であった。

出典

1) 杉浦乾郎,山田紀利:東海環状可児亜炭坑充填工事を終えて,充てん,第44号,pp.8-17,2003.
2) 一般社団法人充填技術協会:-特別記念誌-地下空洞充填事業の調査・施工研究史,pp.124-125,2020.