小規模充填工事例

冨士開発株式会社 阿 部 暢 夫

1.工事概要と、特に配慮した点

 本事例は、名古屋市東郊の住宅地で、亜炭採掘跡の空洞及び立坑跡が起因と見られる陥没が発生した事から、空洞充填工事を実施し、将来の更なる大規模陥没等の事故を未然に防ぎ、地盤の安定化を計る事を目的とし実施した。
 以前近隣では充填工事が行われたが、陥没が発生した付近は、稼行亜炭層が深度20m以上の深いところに分布するため充填地区対象外であった。しかし激しい降雨の後、擁壁の傍に陥没箇所が発見され、その対応が早急に必要とされたため、まずその原因調査を行なった。
 今回の充填工事は、既存構造物直下を対象とするため、工事の影響を最小限に抑えるために、動態観測などの計測により充填管理を行なったこと、また材料にキラ泥水を使用し一般のグラウト設備を採用したことが特色とされる。

2.予備調査結果

2-1 陥没状況の観察

 陥没は、下の写真に示すように擁壁の基礎部分に発見された。地表部での大きさは幅0.5m長さ1.0m深さ0.5mと小規模なものであったが、擁壁基礎を通過し家屋の直下まで及んでいた。その状況を図-1に、既に充填工事が行われた区域との位置関係を図-2に示した。

写真-1 擁壁中央部の陥没状況
写真-2 陥没部の拡大写真
図-1 観察結果を模式的に示した断面図
(図-2によれば、亜炭層は深度約25mの位置にあり、採炭廃坑よりは立坑に関係した陥没である可能性が大きいと判断された)
図-2 陥没地点と亜炭層の地下等高線
亜炭層は南西に傾斜していることが分かる

2-2 既存資料の検討

 既存資料によると採炭された亜炭層は深度25m付近に分布している。また立坑(赤点位置)は戦中・戦後の航空写真によると数多く点在し、今回陥没位置の近隣にも認められる。この地区は亜炭層までの土被りが深度15m以上の区域に当るため、以前の充填工事の対象範囲となっていなかった。
 地層は丘陵地を構成する第三紀層の地盤が地表付近より分布している。地層の走向はNW-SEで傾斜角はSW方向に9度である。